【リティーヤとヤムセ】
 いきなりなんですけどリティーヤ可愛いですよね? 可愛い。ヤムセはひたすら好みに突っ走って書いたキャラでしたが、読み返すと暴力的だし衝動的だし、今書こうと思っても書けないなと思ってしまいます。少なくとも商業で書く時はもっとセーブしてしまいそう。
 ヤムセの少年時代はかなり不幸で不運な終わり方を迎えますが(ヤムセに落ち度はないしユローナも望んでいたわけではなかったのですが)、すごく濃密で煌めいていたと思います。
 私はリティーヤも好きですが、ヤムセも同じくらい好きで、彼らがお互いに相手を救う、救おうとするあり方が好きでした。

【バドとかゼストガとか】
 ヤムセに限らずこの作品のキャラは粗暴な人たちが多いですね……小競り合いが多い、舐められたら終わりみたいな世界で生きているせいもあるかと思いますが。テヨルもヴォルドもすぐ手が出る。バドでさえゼストガを銃で撃とうとしてましたね。
 いや、バドはああ見えて拳を振り上げずいきなり引き金に指をかけるような男なので、バドでさえという言い方はおかしいかも(彼は仕事以外での暴力は避けていますが)。ゼストガとかほんとかわいいですね。リティーヤのほっぺ引っ張るくらいですもん。育ちのよさがにじみ出ている。お母様の教育の賜。

【テヨル】
 テヨルも徒手空拳でめちゃ強い設定でした。最終決戦参加させられなくてごめん、テヨル……。
《J》の位階のテヨルですが、実は元々もっと高位で、なんかやらかして降格処分を食らっています(あの喧嘩っ早さから経緯はお察しください)。そのせいでしばらく謹慎していました。初登場時も実はまだ謹慎中?で仕事には三巻から復帰しています。
《ヘビの一族》の生き残りとも噂されていますが真相はロードマスターしか知りません。ロードマスターが遺跡近くの村で魔力の強い影響下で生まれたと思われる子どもを《学園》に連れてきたというのが公的な記録です。連れて来られた時の彼女は言葉もわからず自我もあまり育っていない?状態でしたが、すさまじい吸収力で数年で頭角を現しました。
 魔力の補助なしでも肉体的には普通の人間より強靱だと思います。
 バドとは若い頃に色々あり、一度は喧嘩別れしました。当時はバドもキレキレで、テヨルとは犬猿の仲でしたが、同時に強く惹かれ合ってもいました。《学園》では魔術師同士の結婚を禁じており、将来を悲観して別れを選んだ面もあります。その後研究室立ち上げで再会、くっついたり離れたりを繰り返していましたが、やはり別れがたく今に至ります。
 バドとのその後は「三年後の往復書簡」にて少し触れていますが、完全に元のさやに収まった感じですね。二人でロードマスターの実証実験に参加、オルドゥナを巻き込んで、学内で子を育てるための環境を整えます。たぶん、学内に働きに来ている一般人の子のための保育所を作って、そこで魔術師の子も育てられるようにするとかじゃないかな? 進学後はちょっと遠いけど、町の学校まで通わせるのかな~と思います。
 ちなみに本人にもロードマスターに出会う以前(十歳より前)の記憶はありません。ロードマスターは自分を見いだし人生を与えてくれた相手であり、お互いに精神的な支えになっています。

【学園】
 肉体的に強靱で近接戦闘に長けた魔術師が普通に多い世界観です。《流れ》魔術で肉体強化して戦えるので接近戦が可能で、そのために日々鍛錬していますし、勢力圏外であんまり派手に魔術使って周囲に被害を出すと問題になるのでこっそり始末をつけるために接近戦が推奨されることもあります
 原生林を内包する広大な敷地に点在する建物群という学園のイメージは北海道にあるH大から……。

【キリフエル】
 内部調査局の局員で、ヤムセの同期で友人の魔術師です。登場巻は五巻、七巻、八巻。五巻では室長室を調べたばっかりに顔中に消せないキスマークをつけられ、八巻の遠征では豊富な極地遠征の経験をかわれ、斥候チームの隊長を任されています。
 あまり書けませんでしたが、彼は最初期のプロット(バドもテヨルも出てこないようなプロット)から存在していました。何故かというと学外の人と結婚して別居婚してるアカデミーの魔術師の例を描こうと思っていたからでした。
 そういうわけでキリフエルはアムブールに家があって妻(画家)がいます。
 アカデミーでは結婚してると出世で不利になるけど気にしていません。五巻ではテヨル相手にきつい物言いもしましたが、基本的に穏やかな性格の人で、ユローナ出奔当時のヤムセのことも知っていて、ヤムセを気にかけています。リティーヤと駆け落ちしたと聞いた彼の第一声は、「はあ???」でした。ヤムセとは最終巻後も手紙などでやりとりしています(ほとんど研究上のやりとりですが、時々私信もある)。

【トラリズ家の逃がし屋親子】
 母上が本当の母でお父様と呼ばれてるのは息子です。母子です。ブローシズは若い頃に(アヴォロットの父親になる男性と)駆け落ちの経験があります。その後色々あって秘術で若返っていますので(おそらく今後も歳はとらない)、実年齢はかなり上です。
 アヴォロットの年齢を考えると、ブローシズの実年齢は五十代でしょうか。二巻、六巻、九巻で登場しています。特に政治信条などはなく、金を払えば誰でも逃がしてくれます。二巻で出た彼らが最終巻でリティーヤたちを逃がす展開はやれたらいいなあ~とずっと思っていたので、念願叶って嬉しかったです。
 そういえば元々この母上は別作品を考えている時に作った脇役で、その時は「フリルいっぱいのおしとやかな幼女の格好をした中身おっさんのフィクサー」みたいなキャラクターでした。

【ファルクロウ】
 リティーヤとヤムセの駆け落ちについての彼の反応はかなり面白そうだな……と思ったのでちょっと寝かしておきたいです。あえて言うと、おそらくこの駆け落ちを彼に知らせたのはレッドロック家当主の義父ロイス・レッドロック(五巻に登場)で、この人はファルクロウの反応を楽しむためにあえて自分で知らせることにしたな……と思うのです。ちなみにロイス・レッドロックは有望そうな若者を養子にするのでファルクロウ以外にも養子がたくさんいるんですが(ファルクロウは十二番目の息子)、この一族の序列は年齢ではなく養子にした順番なので、ファルクロウの上にいる兄姉のうち数名はファルクロウより年少です。当主は割と細面でまだ四十代くらいのはず。気まぐれというか本心がよくわからない人なので、養子となって日が浅いファルクロウはよく翻弄されています。
 ファルクロウは後ろ盾もない自分の実力を買ってくれたこの当主に結構がっつり惚れ込んでおり、つい甘やかし気味になっています。

【ゼストガ】
 リティーヤへの恋慕を募らせるが、複雑な立場のためにうまいことアプローチできずいきなり駆け落ちのお誘いみたいなことになってしまう。プライドの高さと権力欲と育ちの良さが相まってこういうキャラになってしまいました。世の中を斜めに見がちですが、たぶん主要キャラの中ではかなりまともな情緒を育んでいる方だと思います。勿論借金取りに追われる父という現実と貴族のプライドの相克に苦しんだ幼少期は到底まともとは言いがたいのですが、個性的な母と兄の存在に救われています。
 彼の初期設定を見返していたら、「故郷を捨て故郷からも切り離されたヤムセが少しうらやましい。早く出世して病弱な母を迎えたい。」という文章が出てきました。最終的な原稿では彼の母は病弱ではありませんし、彼も別に母を迎えたいと思っているわけではないのですが、やはり彼は故郷(母)と縁を切りたいのに切れないところがあって、そこは変わらなかったな……と思います。
 彼の根幹にはたぶん幼少期の経験があって、それが彼の承認欲求と上昇志向を育んだのでしょうね。彼の不器用で人間的なところが私は結構好きです。

【セリネ】
 ヤムセの姉。《蛇の目連隊》次期連隊長の有力候補と見なされていた。ヤムセの姉なのでやはり天然。当るを幸いかみつくような不良少年だったイルザークをその腕力でねじ伏せ、更生させた。イルザークは要領がよくあまり懲罰をうけなかったこともあり、彼の思い出の中では年々美化されています。
 見た目はほぼほぼ女性版ヤムセ、髪は長くてヤムセより表情が豊かでよく笑い、女性としてはかなり長身。趣味のレース編みへの入れ込みようは彼女なりの女性性の発露なので、事情を知る周囲は下手に拒絶できず、彼女お手製の「鞘カバー」などを身につけてきました。強靱な肉体とリーダーシップの持ち主。
 女らしい、ということにもこだわる人だったので、所作や言葉遣いなどはたおやかで女性らしく見えるよう心がけていたようです。性格は豪放磊落。
《公爵夫人の隕鉄》はこの世界の外から飛来したものなので、魔術の理の外にあります。

【ヴォルド】
 いやらしいいやなおじさんでバドとヤムセをスパルタ指導で鍛え上げた人。引退したロートルとしての初登場から局長復帰の流れは綺麗にはまったなーと思いましたが初登場時はそこまで考えていませんでした。いや、まさか復帰するとは……。バドにはかわいそうなことをしました。空白をうまく埋めたというか、つなぎ的な面のある人事ですし、ヴォルドも以前ほど権力に固執するつもりはないと思うので、適当に学長と話し合って後任に譲ると思います……ん? 後任?それってバ……
 犬の地位が弟子のそれより高い。
 ロリロナは彼に《学園》に連れて来られて再教育を受けた感じですが、ヴォルドはこういう人なので実質的な世話はバドが見ました。彼女の公的な後見人はヴォルドです。おじいちゃんとおじいちゃんを毛嫌いする孫みたいな関係性です(捕縛時にあれだけボコボコにしたら恨まれもする)。
 これでもかなり円くなったはずなので、それ以前のブイブイ言わせていた彼の下で働いていたバドは本当に苦労しただろうなと思います。

【バドとテヨル】
 私がこの世で一番この二人のカップリング好きなんじゃないかな?と思っています。
 バドはテヨルの二歳上。当時所属していた研究室の指導教官に頼まれて、《学園》に来たばかりのテヨル(十歳くらい)を風呂に入れたことがあります。当時のテヨルはまだぼーっとしていて言葉も喋らなかったので、バドは風呂に入れようとして服を脱がしたら女だったと初めて気付きました。
 性格や考え方の違いもありしょっちゅう喧嘩していますが、バドはテヨルの情が深く苛烈なところにどうしようもなく惹かれていますし、テヨルはバドことをめちゃくちゃ可愛い男だと思っています。